No.16

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【TED感想】Bryan Stevenson: ブライアン・スティーブンソン「司法の不公正について話さなければなりません」

以前みた映画、「黒い司法」のモデルとなっているブライアン・スティーブンソンのTEDを見ました。ブライアンは十分な弁護を与えられていない死刑囚のために奔走している人権弁護士です!映画の内容とリンクする部分もあり、かなりグッとくる内容だったので、簡単に感想を書いていきたいと思います!

TEDの動画はこちらからどうぞ~

www.ted.com

 

衝撃的なアメリカ南部の状況

ブライアンのスピーチを聞いていると、いかにアメリカ南部で差別が色濃く残っているかがわかります。

One out of three black men between the ages of 18 and 30 is in jail, in prison, on probation or parole. In urban communities across this country -- Los Angeles, Philadelphia, Baltimore, Washington -- 50 to 60 percent of all young men of color are in jail or prison or on probation or parole.

18才から30才までの 黒人の3人に1人が 牢屋や刑務所にいるか 保護観察中か仮釈放中なのです 一方 この国の都市部で ― ロサンゼルス フィラデルフィア ボルチモア ワシントンは― 有色人種の若者の50から60パーセントが 牢屋や刑務所にいるか 保護観察中か仮釈放中なのです 

 

Right now in Alabama 34 percent of the black male population has permanently lost the right to vote. We're actually projecting in another 10 years the level of disenfranchisement will be as high as it's been since prior to the passage of the Voting Rights Act. And there is this stunning silence.

アラバマ州や多くの州では もし 刑法上有罪となったら 本当に 選挙権を永久に喪失します アラバマ州では現在 34パーセントの黒人男性が 永久に選挙権を失ってしまった状態です 私たちの予測では あと10年もすれば 選挙権喪失で選挙権を持たない割合が 公民権法制定時と同じくらいに なってしまうと予測しています そんな中なのに 誰も騒がないこの静けさです

 

For every nine people who have been executed, we've actually identified one innocent person who's been exonerated and released from death row. A kind of astonishing error rate -- one out of nine people innocent.

アメリカでは 時に誤って 死刑判決が下されるからです 私たちが確認した死刑囚の 9人に1人が 実際には潔白な人でした その人々は容疑が晴れて 死刑から解放されました 驚愕の冤罪率です 9人に1人が潔白なのです

 

you're 11 times more likely to get the death penalty if the victim is white than if the victim is black, 22 times more likely to get it if the defendant is black and the victim is white -- in the very states where there are buried in the ground the bodies of people who were lynched. And yet, there is this disconnect.

もし被害者が黒人ではなく白人だと 11倍も死刑になる可能性が高く もし容疑者が黒人で被害者が白人だと 死刑になる可能性は22倍です ― これが暴行にあった人々の死体を埋めて 葬ってきた南部の州で起こっています それなのに これほどにも無関心な状態なのです

 

肌の色によって刑が変わる。しかも、死刑になった人のうち9人に1人が冤罪だった。恐ろしいと思いませんか?これが自分の周りで起きていたら、と思うとぞっとしてしまいます。しかもそれだけでなく、逮捕されてしまえば選挙権を失う。差別したい側からすれば、冤罪でもなんでもいいからとにかく捕まえてしまって政治的に意見することもできなくしてしまえ、となってしまう。本当に、恐ろしいことだと思います。

黒い司法の中でもあったけれど、本当に黒人は国から守ってもらえない。むしろ、積極的に消されようとしている。差別なんて遠い昔の話、と思っていたけれど実はそうじゃないということを知りました。

 

死刑、は行うべきなのか?

ブライアンは、死刑執行に反対の立場をとってします。

It's interesting, this question of the death penalty. In many ways, we've been taught to think that the real question is, do people deserve to die for the crimes they've committed? And that's a very sensible question. But there's another way of thinking about where we are in our identity. The other way of thinking about it is not, do people deserve to die for the crimes they commit, but do we deserve to kill? I mean, it's fascinating.

死刑の是非の問は興味深いです 様々なところで 私たちは 死刑の是非は 犯してしまった犯罪が 死に値するかどうかを考えるものと 教えられていきました この問は非常に妥当なものですが “アイデンティティ” が どんな 状況なのかを考える別の見方があります その見方とは 人が死に値するかを考えるのではなく 私たちが人を殺すに値しているかです 非常に興味を引かれます 

 

 I've learned very simple things doing the work that I do. It's just taught me very simple things. I've come to understand and to believe that each of us is more than the worst thing we've ever done. I believe that for every person on the planet. I think if somebody tells a lie, they're not just a liar. I think if somebody takes something that doesn't belong to them, they're not just a thief. I think even if you kill someone, you're not just a killer. And because of that there's this basic human dignity that must be respected by law.

単純なことが分かりました 自然と分かるようになったのです 私たちそれぞれが 最悪のことをしてしまったとしても ただそれだけの存在ではないと気づき そう信じるようになったのです この地球上のだれもが そういう存在だと信じています もし嘘をついた人がいても 単に嘘つきとは考えません もし他人の持ち物を盗んだ人がいても 単に泥棒とは考えません もし殺人をした人がいても 単に殺人者とは考えません 基本的な人間の尊厳があり その尊厳は法律によって― 守られなければならないからです

少なくとも、アラバマのように碌な捜査や弁護もなく死刑にされるのはあり得ないというのはまっとうな感覚を持っている人間であれば意見が一致するところだと思いますが、本当に凶悪な犯罪を起こしてしまった人に対する死刑制度はどうでしょうか。「本当にその罪が死に値するのか?」「本当にその人は死ななければならない人なのか?」そんな切り口で語られることの多い問題かと思いますが、ブライアンは「本当に私たちは人を殺すに値しているのか?」という切り口からも語っています。それに値する人・機関・国なんてないんじゃないかな、というのが個人的な感想です。

一方で、「死刑があることで犯罪の抑止力になる」という声も。ただこれに関しては、死刑になるほどの犯罪をしてしまう状況にその人がなってしまった時点で、死刑があろうとなかろうと結果は同じな気がしています(その辺の心理学的な部分はよくわからないけれど)。

ん~…そもそも悪いことしなきゃいけない状況が減ればいいのに。快楽とかでやってしまう人はもうどうしようもないにしても、追い込まれてそうなってしまうことのない世の中になったらいいのになぁ、と思う。周囲に心を病んでしまった人がいて他人に危害を与えるかもしれないと感じても、何もすることができない。きっとそんな人が世の中には沢山いてそのひと握りが本当に大きな事件を起こしてしまう。どうにか、救いのある世の中になればいいのに。(話がちょっと逸れてしまいました)

 

評価されるべきこととは?

ブライアンのスピーチの中で、一番ぐっときたのが以下の一節です。

I believe that, despite the fact that it is so dramatic and so beautiful and so inspiring and so stimulating, we will ultimately not be judged by our technology, we won't be judged by our design, we won't be judged by our intellect and reason. Ultimately, you judge the character of a society, not by how they treat their rich and the powerful and the privileged, but by how they treat the poor, the condemned, the incarcerated. Because it's in that nexus that we actually begin to understand truly profound things about who we are.

 私はとても効果的で素晴らしく 鼓舞される刺激的なものであるという 事実は認める一方で 最終的には 人類や社会は テクノロジーによって評価されるものではなく デザインによって評価されるものではなく 知性や理由によって評価されるものではない と信じています 最終的には 社会の品格を評価するのには 社会での お金持ちや権力者や 特権階級の扱われ方ではなく 貧乏人や侮辱され収監されている人の 扱われ方で評価するのです 正義に繋がるものによってこそ 私たち人類が根本的にどんなものかを 知り始めることができるからです

(多少、疑わなければならない部分もあるとはいえ)日本のテクノロジーは先端的なものだと思う。一般に、進んだ社会として評価される国なんだろうと思う。でも、それは本当なのか?「権力者の扱われ方ではなく、貧乏人の扱われ方で評価する」と言われたときに、日本は誇れる国なんだろうか?正義、と言われるものが日本からどんどん消えて行っているように感じています。どんどん貧しい国になっているような気がします。そう考えると、アメリカ南部の差別を他人事と思えなくなるのです。 日本も外から見たら「ヤバイ国」なんじゃないか、と思うのです。「正義につながるもの」をちゃんと大切にして評価すべき豊かな国になるにはどうすればいいのか、そんなことを本気で考えなくてはならないなと思いました。

まとまらないまとめ

ブライアンのTED、聞き取りやすいし色々考えるいいきっかけになりました。映画「黒い司法」を合わせてぜひ!

黒い司法の感想はこちら~

orca16.hatenablog.com

 (なんか、そういう映画だからなんだけれど、ブライアンの話になるとどうにも反日本の人、みたいになってしまう。笑 普段は政治とか考えずに生きているんだけれど、ブライアンの言葉が鋭くていろいろ考えてしまうのです。)